転職体験記|ケース18|人材紹介からRPOへ。28歳で広げた「採用・HR」のキャリア

コーリング株式会社の佐々木陽一です。人材紹介を中心に、人材業界・HR業界における転職支援や採用支援に携わっています。
今回は、人材紹介会社で両面型コンサルタントとして経験を積んだ後、28歳でRPOへ転職し、現在はプロジェクトリーダーとして企業の採用支援に携わっているQさんにお話を伺いました。
もともとHR領域に興味を持ち、採用に関わる仕事として人材紹介を選んだQさん。転職活動を始めた当初は、別の人材紹介会社への転職を中心に考えており、RPOは選択肢に入っていなかったそうです。
そこから、なぜRPOという仕事に興味を持ち、転職を決めたのか。そして、実際に企業の採用活動により深く関わるようになったことで、人材紹介時代の経験をどう捉えるようになったのか。
人材紹介会社で働きながら、今後も人材紹介を続けるのか、RPOや人事などHR領域へキャリアを広げるのかを考えている方にとって、一つの参考になるケースだと思います。
なお、このシリーズでは、必ずしも当社が採用決定までご支援した方のみを取り上げているわけではありません。
実際に転職を経験された方や、転職活動の途中にいらっしゃる方など、ご本人の了承を得たうえで、実体験を共有しています。
すぐに答えが出る話ではないかもしれませんが、転職を考え続けている方にとって、ご自身の状況を整理するための一つの材料になれば幸いです。
プロフィール
転職者:Qさん
転職当時:28歳
転職前:人材紹介会社/両面型コンサルタント
転職後:RPOプロジェクトリーダー
転職を意識し始めたきっかけを教えてください。
大きくは、二つあったと思います。
一つは、もっと採用やHRについて知りたい、経験を広げたいと思うようになったことです。
もともと私はHR領域に興味があって、前職には未経験で人材紹介のコンサルタントとして入社しました。
学生時代から、組織と人をつなぐような活動をすることが好きだったんです。将来的には、会社とそこで働く人をつなぐような仕事がしたいという思いが根底にありました。
その中でも、「採用」から人事って始まるのかな、と思っていて。まずは採用に関わる仕事をしたいと考え、人材紹介の仕事を選びました。
実際に働いてみると、人材紹介の難しさもありましたが、楽しさややりがいも感じていました。
一方で、当時の会社の状況や事業ステージもあって、担当できるクライアントはある程度限られていました。もともとHRそのものへの興味が強かったので、もっといろいろな企業の採用を知りたい、エンタープライズ企業や日本を代表するような企業の採用にも関わってみたい、という気持ちが少しずつ強くなっていきました。
また、当時は人材紹介経験者が多い環境ではなく、教育や研修の仕組みが十分に整っていたわけでもありませんでした。未経験から自分なりに調べたり、考えたりしながら仕事を覚えてきたので、「別の人材紹介会社に行けば、もっと学べることがあるのではないか」「もっと視野を広げられるのではないか」と考えるようにもなりました。
もう一つは、働き方ですね。
出社かリモートかということではなく、当時はフレックスではなかったので、夜まで候補者の方との面談をしても、翌朝は決まった時間に出社する必要がありました。
人材紹介の仕事なので仕方がない部分もあるのですが、そういう働き方が続く中で、少し疲れを感じていたのも正直ありました。
転職を決意するきっかけとなった出来事を教えてください。
ある日、身近な人から「大丈夫?」と言われたことがきっかけでした。
私は「え、何が?」という感じだったんですけど(笑)、どうやらかなり疲れているように見えたみたいなんです。
今振り返れば、確かに仕事をしている時間も長かったですし、仕事量も多かったので、そう見えていたのかなと思います。
ただ、それ以上に、その一言をきっかけに自分のキャリアについて改めて考えたことが大きかったですね。
それまでも今後のキャリアについて考えてはいたのですが、どこかぼんやりしていて、迷いながら働いているような状態でした。
そこで、「この状態のまま、あと何年もここにいるのかな」と考えたんです。
それと同時に、「私は周りから、こう見られたかったんだっけ?」「こう見られるために、今こんなに頑張っているんだっけ?」と思うようになりました。
それまで自分の中にあったモヤモヤが、その一言をきっかけに、少しはっきりしたんだと思います。
もともと感じていた「もっと採用やHRについて経験を広げたい」という気持ちも強くなって、転職活動を始めました。
当時、転職活動はどのように進めていましたか?
転職活動については、ご縁のあったエージェントの方と進めていました。結果的には、その1社だけですね。
今はRPOの仕事をしていますが、実は転職活動を始めたとき、RPOは選択肢にありませんでした。
当時の私は、RPOって「企業から言われたことをやる仕事」というイメージを持っていたんです。
一方で、将来的には企業の人事として働くことも考えていました。
そのためにも、まずはいろいろな企業の採用を知りたいという気持ちがありましたし、人材紹介の仕事をやり切ったという感覚もなかったので、最初は別の人材紹介会社への転職を中心に考えていました。
実際、人材紹介会社の選考を受けていたのですが、途中でエージェントの方から、「今後のキャリアや志向を考えると、RPOという仕事も面白いと思いますよ」と提案してもらいました。
そこで初めて、RPOについてきちんと知ったんです。
人材紹介をしていたときも、私は企業側のRA業務が好きでしたし、RPOも単に採用業務を実行するだけではなく、自分たちから企画や提案ができる。企業側により近いところで採用に関われる仕事なんだと知りました。
「それなら面白そう」と思って、そこからRPOも併願するようになりました。
最終的に、どのように意思決定をされたのでしょうか?
最終段階まで進んでいた人材紹介会社については、結構悩みました。
その会社には私と年齢の近い方も多かったですし、事業に対する考え方もしっかりしていました。
当時の私は、「ここなら、もう一度ちゃんと人材紹介を学べるかもしれない」と感じていて、そこにはすごく魅力を感じていました。
一方で、最終的に入社した会社は、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が明確で、「この会社は何を課題だと考えていて、何を実現しようとしているのか」という部分にすごく納得感がありました。
「RPOだから選んだ」「人材紹介ではなかったから選んだ」ということだけではないんですよね。
会社が目指していることへの共感がまずあって、そのうえで、それまで知らなかったRPOという仕事の面白さや可能性を知って、「やってみたい」という気持ちが強くなっていきました。
人材紹介の仕事よりも、RPOの方が、より企業側に近いところで採用に関われる。そこに自分も関わってみたいという気持ちもありました。
それに、やってみて「やっぱり私は人材紹介がやりたい」と思ったら、そのときにもう一度挑戦してもいいんじゃないか、とも考えました。
だったら、今は自分が知らなかった仕事に一度挑戦してみよう。
そう思えたことが、最終的には大きかったですね。
現在のお仕事について、やりがいや難しさを教えてください。
やりがいはいろいろありますが、一つは、希望していたエンタープライズ企業や、日本を代表するような企業の採用に関われていることです。
もう一つは、いろいろな人と一緒に仕事ができることですね。
RPOという仕事の特性上、社内にも関係者がたくさんいて、一緒に動く仲間がいます。クライアントも大きな企業になると、採用に関わる方がたくさんいます。
そういう方々と仕事をすることで、いろいろな考え方や知識に触れられますし、「日々勉強しているな」「成長できているな」という実感があります。
あとは、以前よりも企業の採用活動そのものに深く関われている感覚があります。
人材紹介では、両面型コンサルタントとして一人で企業と候補者の双方を担当していたので、自分で仕事を回せることにやりがいを感じていました。
今は逆に、一人では絶対に完結できません(笑)。
そこは、やりがいでもあり、難しさでもありますね。
難しさでいうと、まず「データ」です。
人材紹介ももちろんデータを見る仕事ではありますが、日々の仕事では、「候補者の方はこう考えています」「企業はこう考えています」というように、人と人との間に立ってコミュニケーションする場面が多かったと思います。
RPOでは、それに加えて、より細かく、多面的なデータを見ながら、「なぜこうなっているのか」「だから何をするのか」を社内やクライアントに説明する必要があります。
データを取るだけではなく、それをどう読み、どうエビデンスとして使って、相手にどう提案するのか。
ここは、もっと勉強しないといけないなと思っています。
もう一つは、やはり関係者が多いことです。
人材紹介では、一人で判断して動ける場面も多かったのですが、RPOではそうはいきません。
採用のオペレーションがあって、社内にもクライアント側にも複数の関係者がいて、それぞれとコミュニケーションを取りながら調整していく必要があります。
人材紹介には、候補者の方に応募していただく、企業と候補者をつなげる難しさがあります。
一方で、企業の採用活動に入ってみると、採用全体を動かしていくための別の難しさがある。
そこは、実際にRPOを経験して初めて分かったことですね。
いま振り返って、当時のご自身をどう見ていますか?
ほんと、よく頑張ってましたね(笑)。
しゃかりきに頑張っていたというか。
当時の活動量や行動力を考えると、「あれだけ動いていたのはすごいな」と、自分でも思います。
分からないことも多い中で、自分なりに調べたり、考えたり、模索しながらやっていたので、そこはよく頑張っていたなと思います。
ただ、今振り返ると、採用のことを「知った気になっていたな」とも思います。
もちろん、人材紹介会社によって仕事の進め方は違うと思いますが、私の場合は両面型だったので、企業側も候補者側も自分で担当して、一人で進められる仕事が多かったんです。
今はRPOとして企業の採用活動の中に入って、採用課題や採用企画、オペレーションなど、以前よりもいろいろなものを見るようになりました。
そうすると、採用って、自分が思っていた以上に複雑なんだなと。
複雑な課題に向き合ったときも、知識があればすぐ解決できるわけではなくて、何が問題なのかを整理して、関係者と話して、段取りを立てながら進めないと解決できない。
以前の私は、そういうところまで分かっていなかったと思います。
もちろん、当時も企業に対して、人としても人材紹介のコンサルタントとしても、一生懸命向き合っていたつもりです。
でも、今だから分かることも含めて考えると、向き合えていた「深さ」は、まだ足りなかったのかもしれないなと思います。
近しい境遇の方へ、何か伝えるとしたら?
内省につながる質問ですね(笑)。
そうですね……。
今振り返ると、当時は「エージェント」という響きに、少し憧れていた自分もいたと思います。
エージェントとして頑張りたい、エージェントとしてキャリアをつくっていきたい、という気持ちは確かにありました。
でも今考えると、「エージェントをすること自体が、私の目的だったのかな?」とも思うんです。
もともと私はHRに興味があって、会社や組織と、そこで働く人をつなぐような仕事がしたいと思っていました。
その一つの選択肢として人材紹介があって、実際に経験したからこそ学べたこともたくさんありました。
だから、もし今、同じようにキャリアについてモヤモヤしている方がいるのであれば、「自分のキャリア人生で、最後はどんな仕事をしていたいんだろう」というところから逆算して考えてみてもいいのかなと思います。
そのうえで、「今、自分は輝いていますか?」って、一度自分に聞いてみてほしいです。
もちろん、キャリアって全部が計画通りに進むものではないと思います。偶然の出会いや、やってみて初めて分かることもあります。
私自身も、一生懸命頑張ってはいたけれど、「もっといろいろなことをしてみたい」という気持ちがありました。
そこで一歩踏み出して転職活動をしてみたら、RPOという、それまで自分では考えていなかった仕事を知ることができた。
結果として私は、会社や環境を変えてみたいと思いました。
なので、迷っているのであれば、目の前の仕事だけを見るのではなくて、少し視点を変えて、自分がこれからどうなりたいのかを考えてみるのもいいんじゃないかなと思います。
編集後記
今回のQさんのお話で印象的だったのは、転職活動を始めた時点では、RPOへの転職を考えていなかったことです。
人材紹介の仕事にやりがいを感じながらも、もっと幅広い企業の採用を知りたい。将来的には人事の仕事にも関わってみたい。そうした思いから、当初は別の人材紹介会社への転職を中心に考えていました。
そこに、転職活動を通じてRPOという選択肢が加わりました。
人事の仕事をHRM(Human Resource Management/人的資源管理)という広い視点で捉えると、採用はその一つの入口です。
人材紹介では、企業と候補者の間に立ち、採用・転職を支援する。一方、RPOでは企業の採用活動の中に入り、採用課題や企画、オペレーション、データ、複数の関係者との調整などに関わる機会があります。
どちらが良いということではなく、同じ「採用」に関わる仕事でも、立場が変われば、見えるものや求められるものも変わります。
Qさん自身も、人材紹介で培った経験を土台にしながらRPOへ移り、企業の採用活動により深く関わることで、「採用のことを知った気になっていた」と感じるほど、新たな学びを得ています。
そして、今回のお話の中でもう一つ印象に残ったのが、「エージェントをすること自体が、私の目的だったのかな?」という言葉でした。
人材紹介会社で経験を積んでいると、「次も人材紹介なのか」「RAやCA、両面型のどれを選ぶのか」と、今の仕事を起点に次のキャリアを考えることも多いと思います。
一方で、Qさんのように「そもそも自分は何をしたくて、この仕事を選んだのか」というところまで戻って考えてみると、人材紹介を続けるのか、RPOや人事など企業の採用により近い仕事へ進むのか、これまでとは違った選択肢が見えてくることもあります。
今回のQさんも、最初からRPOを目指していたわけではありません。自分がやりたいことを考えながら転職活動を進める中で、それまで知らなかった仕事を知り、興味を持ち、実際にその道を選びました。
キャリアは、最初からすべての選択肢を知ったうえで決められるものではありません。今の仕事の延長線上だけで考えるのではなく、「自分は何をしたいのか」というところまで一度戻ってみることで、初めて見えてくる選択肢もあるのだと思います。
人材紹介会社で働きながら、これからのキャリアを考えている方にとって、Qさんの経験が、ご自身の選択肢を考える一つの材料になればと思います。
人材紹介会社での経験を活かした転職先や、RPO、人事なども含めて今後のキャリアの選択肢を整理したい方は、こちらもあわせてご覧ください。
→ 人材紹介会社から転職したい方へ|キャリアの選択肢と転職エージェントの選び方
コーリング株式会社 佐々木陽一
人材紹介を中心に、人材業界(人材紹介・人材派遣・RPO・求人広告・プロシェアリングなど)や、HR業界(HR Tech・Ed Tech・人事/組織コンサルティング・教育/人材開発など)における転職支援・採用支援に携わる。
人材紹介会社で約19年間、コンサルタント・マネジメント業務に従事した後、事業会社で中途採用・タレントアクイジションを担当。
人材業界・HR業界のキャリアと採用を支える相談相手として活動中。
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