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消費財領域の人材紹介はなぜ難しいのか──求人・年収・ブランド親和性から考える事業構造

コーリング株式会社の佐々木陽一です。人材紹介を中心に、人材業界・HR業界における転職支援や採用支援に携わっています。

消費財領域を専門とする人材紹介会社や組織と、中途採用や事業運営についてお話しする機会があります。

一方で、まだ消費財領域を本格的に扱っていない人材紹介会社の方から、

「今後、この領域を強化したいと考えています」

とご相談をいただくこともあります。

こうした対話を重ねる中で、改めて感じることがあります。

消費財領域は、人材紹介会社にとって魅力のある市場である一方、継続的に成果を上げるには難しさのある領域ではないでしょうか。

今回は、消費財領域の人材紹介が難しいとされる理由を、現場と事業運営の両面から整理します。

今回お伝えしたいこと

・消費財領域に含まれる業界の幅広さ

・求人や年収、紹介手数料から見た事業上の難しさ

・ブランド親和性がマッチングに与える影響

・組織として専門性やノウハウを蓄積する難しさ

「消費財」と一言でまとめるには、対象業界が幅広い

消費財領域という言葉から、一般消費者に身近な商品やサービスを扱う企業をイメージする方は多いと思います。

しかし、実際に含まれる業界は幅広く、それぞれに異なる市場構造や採用特性があります。

例えば、

・ファッション、アパレル
・ラグジュアリー
・日用品
・化粧品
・食品、飲料
・小売
・外食

などです。

同じ消費財領域であっても、顧客層、販売チャネル、職種、企業文化、求める経験は大きく異なります。

そのため、「消費財領域を担当する」と決めるだけでは、専門領域や営業戦略が十分に定まらないことがあります。

どの業界を扱うのか。

どの職種を中心にするのか。

どの年収帯や企業群を対象とするのか。

そこまで具体的に整理しなければ、組織内でも戦略を共有しにくくなります。

求人の数と採用人数が限られやすい

消費財領域には、一般にもよく知られた企業やブランドが数多くあります。

そのため、一見すると求人も豊富にあるように見えるかもしれません。

しかし、人材紹介の対象となる中途採用では、一つの職種で何十人、何百人と採用するケースばかりではありません。

企業や職種によっては、採用枠が一名、数名に限られることもあります。

また、求人が発生するタイミングも一定ではありません。

人材紹介会社にとっては、担当企業や候補者との関係を丁寧に築いていても、短期間で複数の成約につなげることが難しい場合があります。

この点は、継続的に多数の採用ニーズが発生する領域とは異なる特徴です。

年収帯と紹介手数料の面でも、収益化が難しいことがある

人材紹介事業は、一般的に採用が決定した時点で紹介手数料を受け取る成果報酬型のモデルです。

そのため、求人件数や成約数だけでなく、採用される人材の年収帯も事業収益に影響します。

消費財領域では、企業や職種による違いはあるものの、他の専門領域と比較して年収帯が高くなりにくい求人もあります。

また、紹介手数料率の引き上げや、特定求人に対する期間限定の手数料施策が、積極的に行われるとは限りません。

その結果、

候補者との面談や求人提案に時間をかけても、事業としての収益につながるまでに時間がかかる。

一件の成約に対する工数と収益のバランスを取りにくい。

といった課題が生じることがあります。

スキルだけでは決まらない「ブランドとの親和性」

消費財領域の採用では、候補者の経験やスキルだけでなく、企業やブランドとの親和性が重視されることがあります。

例えば、

・ブランドの価値観に共感できるか
・商品や顧客に対する理解があるか
・企業の世界観に合うコミュニケーションができるか
・これまでの経験がブランドの方向性と合っているか

といった点です。

同じ職種の経験があったとしても、企業ごとに求める人物像が異なり、単純なスキルマッチだけでは推薦につながらないことがあります。

人材紹介会社には、職務経歴書に書かれている経験だけでなく、候補者の志向や価値観、企業文化との相性まで理解することが求められます。

この点が、消費財領域のマッチングを難しくする一つの理由です。

人材紹介会社の組織づくりも難しい

消費財領域を事業として強化する場合、誰を配置するかという課題もあります。

未経験のコンサルタントを配置する場合には、業界知識やブランド理解、職種ごとの専門性を身につけるまでに時間がかかります。

一方で、実績のあるコンサルタントを配置しても、求人件数や採用人数が限られていれば、短期的な投資対効果は見えにくくなります。

また、担当者が少人数に限られると、

・求職者情報が一部の担当者に偏る
・求人や企業に関する知見が属人化する
・成功事例を社内へ横展開しにくい
・担当者が異動すると、蓄積した関係や知識が失われる

といった問題も起こりやすくなります。

大規模なチームをつくりにくい一方で、専門性は必要になる。

この両立が、消費財領域の組織づくりを難しくしています。

短期的な成果だけでは評価しにくい領域

人材紹介会社では、売上や成約件数をもとに、コンサルタントを評価することが少なくありません。

しかし、消費財領域では、求人件数や採用人数が限られるため、担当者の努力や専門性が、短期的な数字に表れにくいことがあります。

企業との関係構築に時間をかける。

候補者の志向やブランドとの相性を丁寧に見極める。

将来の求人や転職に備えて、継続的に情報交換する。

こうした活動は重要ですが、すぐに成約や売上へつながるとは限りません。

そのため、他領域と同じ基準だけで評価すると、担当者の専門性や貢献が正しく捉えられない可能性があります。

組織として消費財領域を強化するのであれば、短期的な売上だけでなく、企業との関係、候者ネットワーク、専門知識の蓄積なども含めて、成果を考える必要があります。

難しいからこそ、専門性と信頼が価値になる

ここまで見ると、消費財領域は人材紹介会社にとって、すぐに成果を上げやすい市場とは言いにくいかもしれません。

一方で、難しさがあるからこそ、継続して取り組む人材紹介会社やコンサルタントの専門性には価値があります。

企業やブランドの考え方を理解すること。

候補者の経験だけでなく、志向や価値観まで把握すること。

短期的な成約だけを求めず、企業と候補者の双方と長く関係を築くこと。

こうした積み重ねによって、表面的な求人紹介ではない支援が可能になります。

最後に

消費財領域の人材紹介には、対象業界の幅広さ、求人件数、年収帯、ブランドとの親和性、専門人材の育成など、複数の難しさがあります。

そのため、新たにこの領域へ参入する場合には、

「消費財領域を強化する」

という方針だけではなく、

どの市場を対象とするのか。

どのような専門性を蓄積するのか。

短期的な成果と中長期的な事業づくりを、どのように両立するのか。

そこまで具体的に考える必要があります。

私自身も、消費財領域における人材紹介の実務に携わってきました。

だからこそ、この領域で日々企業や候補者と向き合う方々が感じている難しさや、短期的な数字だけでは見えにくい仕事の価値を理解しています。

消費財領域の特性を踏まえながら、現場と事業運営の双方に即した支援を行っていきたいと考えています。

 

コーリング株式会社 佐々木陽一
人材紹介を中心に、人材業界(人材紹介・人材派遣・RPO・求人広告・プロシェアリングなど)や、
HR業界(HR Tech・Ed Tech・人事/組織コンサルティング・教育/人材開発など)における転職支援・採用支援に携わる。
人材紹介会社で約19年間、コンサルタント・マネジメント業務に従事した後、事業会社で中途採用・タレントアクイジションを担当。
現在はコーリング株式会社を経営し、人材業界・HR業界のキャリアと採用を支える相談相手として活動している。

 

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