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中途採用はダイレクトリクルーティングか、人材紹介か──採用チャネルの役割と使い分け

コーリング株式会社の佐々木陽一です。人材紹介を中心に、人材業界・HR業界における転職支援や採用支援に携わっています。

企業の採用担当者、人材紹介会社のコンサルタント、ダイレクトリクルーティングサービスに携わる方々と話していると、

「これからの中途採用は、ダイレクトリクルーティングが中心になるのでしょうか」

「人材紹介会社や転職エージェントの役割は、今後小さくなるのでしょうか」

という話題が出ることがあります。

ダイレクトリクルーティングは、企業が候補者へ直接アプローチできる採用手法です。

一方、人材紹介は、企業と求職者の間に人材紹介会社が入り、採用要件やキャリアの希望を整理しながら、双方をつなぐ仕組みです。

両者を比較すると、「どちらが優れているか」という議論になりがちです。

しかし、実際の中途採用では、どちらか一方を選ぶというよりも、それぞれの特徴や役割を理解し、採用課題に応じて使い分けることが重要だと感じます。

今回は、人材紹介会社、採用企業、ダイレクトリクルーティングサービスという3つの視点から、中途採用における両者の関係を整理します。

今回お伝えしたいこと

・人材紹介会社がダイレクトリクルーティングを意識する理由

・採用企業がダイレクトリクルーティングを導入する背景

・ダイレクトリクルーティングの運用で生じやすい課題

・人材紹介とダイレクトリクルーティングの役割の違い

・採用チャネルを使い分ける際に考えたいこと

人材紹介会社にとって、ダイレクトリクルーティングは気になる存在

人材紹介会社で働く方々と話していると、ダイレクトリクルーティングを意識しているという声を聞くことがあります。

例えば、

・ダイレクトリクルーティングを利用していない企業を営業先として探す
・企業が利用している場合でも、対象外となっている求人の依頼を受ける
・人材紹介会社だからこそ支援できる求人を見つける

といった営業活動です。

また、

「現在は問題なくても、将来的に人材紹介の仕事が減るのではないか」

と感じている方もいます。

ダイレクトリクルーティングでは、企業が候補者へ直接声をかけられるため、人材紹介会社を介さずに採用を進めることができます。

そのため、人材紹介会社から見れば、自社の役割を代替する可能性があるサービスとして映ることもあります。

一方で、ダイレクトリクルーティングが普及したからといって、すべての採用が企業と候補者の直接のやり取りだけで完結するわけではありません。

どのような求人で、企業がどのような採用課題を抱えているのか。

その中で、人材紹介会社に何が期待されているのか。

自社の役割を理解することが、これまで以上に重要になっています。

採用企業がダイレクトリクルーティングを利用する理由は、採用コストだけではない

人材紹介会社の側からは、

「紹介手数料を抑えるために、ダイレクトリクルーティングを利用するのではないか」

と考えることがあります。

実際に、採用コストは導入を検討する理由の一つです。

ただし、企業の採用目標は、採用コストだけで決まるものではありません。

例えば、

・採用を完了するまでの期間
・採用する人材の質
・内定承諾率
・応募者の人数や構成
・採用したい職種や人材層への接点
・採用部門の事業計画

など、複数の観点があります。

採用企業がダイレクトリクルーティングを始める背景には、次のような事情もあります。

・人材紹介会社へ求人を依頼しても、候補者の推薦が少ない
・採用したい人材に、人材紹介会社経由では接点を持てない
・企業や部門から直接声をかけることで、候補者の関心を得たい
・転職活動を始めていない潜在層へアプローチしたい
・採用担当者だけでなく、部門責任者や現場社員から直接魅力を伝えたい

つまり、企業は人材紹介会社を使わないためだけに、ダイレクトリクルーティングを利用しているとは限りません。

人材紹介だけでは届かない人材へ接点を広げるために、別の採用チャネルを加えている場合もあります。

採用企業が人材紹介会社に期待する役割も変わる

企業が複数の採用チャネルを利用するようになると、人材紹介会社に求められる役割も変わります。

単に求人を預かり、条件に合う候補者を紹介するだけでは、企業にとっての価値が分かりにくくなることがあります。

人材紹介会社には、例えば次のような対応が求められます。

・企業が利用している採用チャネルを把握する
・人材紹介に期待されている役割を理解する
・候補者を紹介しやすい求人だけに偏らない
・企業が特に採用に苦戦している求人へ向き合う
・市場の状況や候補者の反応を企業へ伝える
・採用要件や採用プロセスの改善について意見を伝える

企業が自ら候補者へアプローチできる環境だからこそ、人材紹介会社には、単なる候補者の供給とは異なる価値が求められます。

企業の採用全体を理解した上で、どの求人や人材層に人材紹介が有効なのかを考えることが重要です。

ダイレクトリクルーティングは、導入すれば成果が出るわけではない

ダイレクトリクルーティングは、企業が主体的に採用活動を行える手法です。

企業から候補者へ直接声をかけられることや、採用担当者だけでなく部門責任者や現場社員が候補者と接点を持てることに、大きな魅力があります。

一方で、サービスを導入するだけで、自動的に採用が進むわけではありません。

実際の運用では、次のような課題が生じることがあります。

・誰が、どの求人のスカウトを担当するのか決まっていない
・現場部門を巻き込めず、採用担当者だけに負担が集中する
・スカウトの送信数が増えない
・候補者の選定や文面作成に時間がかかる
・カジュアル面談や選考の対応体制が整っていない
・送信数や返信率は確認していても、改善につながらない
・導入後に利用頻度が下がってしまう

ダイレクトリクルーティングでは、サービスの選定だけでなく、社内の運用設計が成果を左右します。

採用担当者、現場社員、部門責任者がどのように関わるのか。

候補者へ何を伝えるのか。

返信後に誰がどのような対応をするのか。

こうした役割やプロセスを整える必要があります。

ダイレクトリクルーティングサービス側にも難しさがある

ダイレクトリクルーティングサービスに携わる方々からは、

「企業が候補者へ直接アプローチする採用のあり方に、やりがいを感じている」

という話を聞きます。

一方で、サービスを企業へ導入した後、実際の採用成果につなげるまでには難しさもあります。

例えば、

・企業内でスカウト運用を定着させる
・採用担当者以外の社員にも協力してもらう
・スカウトやカジュアル面談の質を高める
・送信数や返信率などのデータをもとに改善する
・利用頻度が下がった企業を支援する

といった課題です。

また、ダイレクトリクルーティングサービスの種類が増えることで、企業から比較される機会も増えます。

さらに、サービスによっては、採用企業だけでなく人材紹介会社も利用者となるため、双方との関係を考えながら事業を運営する必要があります。

人材紹介会社から見れば脅威に映ることがあっても、ダイレクトリクルーティングサービス側にも、運用や定着に関する課題があります。

人材紹介とダイレクトリクルーティングでは、得意なことが異なる

人材紹介とダイレクトリクルーティングには、それぞれ異なる特徴があります。

ダイレクトリクルーティングでは、企業が自ら候補者を探し、直接魅力を伝えられます。

そのため、

・採用したい人材像が明確である
・社内に候補者を探す時間と体制がある
・部門や経営層が採用活動へ関与できる
・企業や事業の魅力を直接伝えたい
・転職潜在層へ継続的に接点を持ちたい

といった場合に活用しやすい方法です。

一方、人材紹介では、人材紹介会社が企業と求職者の間に入り、双方の情報や意向を整理します。

そのため、

・採用要件の整理に支援が必要である
・採用市場や候補者の反応を知りたい
・候補者を探す時間や体制が限られている
・候補者の転職理由や希望を踏まえて提案してほしい
・選考や内定承諾まで継続的に支援してほしい

といった場合に価値を発揮しやすくなります。

どちらが優れているというよりも、採用課題や社内体制によって、適した手法が異なります。

「どちらを使うか」ではなく、「何を解決したいか」を考える

採用チャネルを選ぶ際には、

「人材紹介か、ダイレクトリクルーティングか」

という手段から考え始めると、判断が難しくなることがあります。

先に考えるべきなのは、

・どのような人材を採用したいのか
・どの求人で採用に苦戦しているのか
・どの程度の期間で採用したいのか
・社内でどこまで採用活動へ時間を使えるのか
・候補者へ誰が魅力を伝えるのか
・現在の採用チャネルで、何が不足しているのか

という採用課題です。

例えば、企業名や事業に関心を持ってもらいやすい求人であれば、企業から直接アプローチする方法が有効かもしれません。

一方で、求人の魅力やキャリアの可能性を第三者が整理して伝える必要がある場合には、人材紹介会社の支援が有効になることがあります。

同じ企業でも、求人ごとに適したチャネルが異なる場合もあります。

人材紹介とダイレクトリクルーティングは、両立できる

企業がダイレクトリクルーティングを利用しているからといって、人材紹介会社を利用する必要がなくなるとは限りません。

実際には、

・特定の求人はダイレクトリクルーティングで採用する
・採用難易度の高い求人は人材紹介会社へ依頼する
・企業からの直接スカウトと、エージェントからの提案を併用する
・採用状況に応じて、チャネルごとの比重を変える

といった使い分けが考えられます。

採用企業にとって重要なのは、採用チャネル同士を競わせることではありません。

それぞれの特徴を理解し、採用したい人材と接点を持つための全体設計を行うことです。

人材紹介会社にとっても、ダイレクトリクルーティングを競合として見るだけではなく、企業の採用活動を構成する一つのチャネルとして理解することが必要です。

最後に

これからの中途採用を考える際に、人材紹介とダイレクトリクルーティングのどちらか一方を選ぶ必要はないと考えています。

ダイレクトリクルーティングには、企業が候補者へ直接アプローチできる強みがあります。

人材紹介には、企業と求職者の間に入り、情報や意向を整理しながら採用と転職を支援する役割があります。

大切なのは、

どのような人材を採用したいのか。

現在の採用活動で何が不足しているのか。

企業内でどの程度の運用体制をつくれるのか。

人材紹介会社に、どのような価値を期待するのか。

こうした点を整理し、求人や状況に応じて採用チャネルを組み合わせることです。

「人材紹介か、ダイレクトリクルーティングか」ではなく、

採用を成功させるために、それぞれをどのように活用するか。

これからの中途採用では、その視点がより重要になるのではないでしょうか。

 

コーリング株式会社 佐々木陽一
人材紹介を中心に、人材業界(人材紹介・人材派遣・RPO・求人広告・プロシェアリングなど)や、
HR業界(HR Tech・Ed Tech・人事/組織コンサルティング・教育/人材開発など)における転職支援・採用支援に携わる。
人材紹介会社で約19年間、コンサルタント・マネジメント業務に従事した後、事業会社で中途採用・タレントアクイジションを担当。
現在はコーリング株式会社を経営し、人材業界・HR業界のキャリアと採用を支える相談相手として活動している。

 

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