転職体験記|ケース17|人材紹介から人材育成・組織開発へ。34歳で考えた「採用の先」のキャリア

コーリング株式会社の佐々木陽一です。人材紹介を中心に、人材業界・HR業界における転職支援や採用支援に携わっています。
今回は、34歳で人材紹介会社の両面型コンサルタントから、人材育成・組織開発コンサルティング会社のコンサルタントへキャリアチェンジされた方に、実際のお話を伺いました。
人材紹介の仕事を続けるなかで、「採用」という場面だけでなく、その先にある人材育成や組織開発にも関わりたいと考えるようになった背景について伺っています。
また、人材紹介、事業会社人事、HR Tech、人材育成・組織開発などの選択肢をどのように整理したのか。未経験の領域へ転職するにあたり、年収や今後のキャリアまで含めてどのように意思決定したのかについても、ご本人の言葉をもとにご紹介します。
なお、このシリーズでは、必ずしも当社が採用決定までご支援した方のみを取り上げているわけではありません。
実際に転職を経験された方や、転職活動の途中にいらっしゃる方など、ご本人の了承を得たうえで、実体験を共有しています。
すぐに答えが出る話ではないかもしれませんが、人材紹介・HR業界で働きながら、これからのキャリアを考えている方にとって、ご自身の状況や選択肢を整理するための一つの材料になれば幸いです。
プロフィール
転職者:Pさん
転職当時:34歳
転職前:人材紹介会社/両面型コンサルタント
転職後:人材育成・組織開発コンサルティング会社/コンサルタント
転職を意識し始めたきっかけを教えてください。
人材紹介の仕事では、企業の経営課題や組織課題、中途採用計画についてヒアリングする機会があります。
なぜ採用するのか。どのような課題があり、どのような人材が必要なのか。
そうしたことを企業と一緒に整理しながら人材要件を考え、求人として形にして、候補者の方へご紹介していきます。
私自身、もともと企業の課題解決に関わりたいという気持ちがあり、人材紹介の仕事を選びました。
企業の経営や組織について話を伺い、採用を通じて支援できることにはやりがいを感じていました。
一方で、数年仕事を続けるなかで、少しずつ考えるようになったことがありました。
企業の課題についてヒアリングし、採用すべき人材を考える。
ただ、その後に自分ができることは、基本的にはその要件に合う候補者を探し、ご紹介して、採用決定につなげることです。
もちろん、それが人材紹介の役割ですし、採用によって解決できる企業課題もたくさんあります。
ただ、自分は企業活動において本当に「採用」という場面をやりたかったのだろうか。
それとも、企業が抱えている組織や人の課題そのものに、もっと深く関わりたかったのだろうか。
そんなことを考えるようになったのが、転職を意識し始めたきっかけでした。
転職を決意するきっかけとなった出来事を教えてください。
大きかった出来事は2つあります。
1つは、担当していた企業の人事の方と食事をする機会があったことです。
普段の打ち合わせとは少し違った雰囲気のなかで、中途採用について話をしたり、日頃の支援について感謝の言葉をいただいたりしました。
それは素直に嬉しかったですし、人材紹介の仕事をやっていて良かったと思える時間でもありました。
一方で、その方から実際の人事の仕事や社内の話を聞くなかで、改めて気づいたことがありました。
企業の人事が向き合っているのは、中途採用だけではありません。
採用した人に活躍してもらうことや、人材を育成すること、組織をより良くしていくことなど、その先にも様々なテーマがあります。
人材紹介会社とのコミュニケーションは、その方が向き合っている「人と組織」の仕事の一部分だったのだと実感しました。
もちろん、「採用したら、次は育成」「定着させるには組織風土を変えればいい」といった単純な話ではありません。
むしろ、実際の企業の中では、それぞれの課題が複雑につながっています。
その話を聞いたことで、自分も採用という一つの手段だけではなく、人材育成や組織開発など、企業の中にある人や組織の課題にもっと踏み込んで関わってみたいと思うようになりました。
もう1つは、そうした自分の気持ちやモヤモヤを、転職エージェントに話したことです。
最初から「人材育成・組織開発コンサルタントに転職する」と決めていたわけではありませんでした。
ただ、自分が仕事で感じていることを話しながら整理していくことで、人材紹介以外にも、これまでの経験を活かしながらやりがいを持って挑戦できる仕事があるのではないかと考えられるようになりました。
そこから、実際に転職という選択肢を考えるようになりました。
当時、転職活動はどのように進めていましたか?
転職エージェントを利用しながら進めました。
人材紹介の仕事が嫌いになったわけではありません。ただ、だからといって別の人材紹介会社へ転職したいという気持ちでもありませんでした。
自分の中では、人材育成や組織開発への関心が強くなっていました。
一方で、最初からその領域について十分な知識があったわけではありません。
人材育成・組織開発と人事コンサルティングはどう違うのか。
事業会社の人事へ転職する選択肢はどうなのか。
HR Techのように、テクノロジーやプロダクトを通じて人や組織の課題を解決する仕事はどうなのか。
考え始めると、選択肢はどんどん広がっていきました。
自分一人で考えていると、「興味があること」と「実際に転職先として選ぶこと」が混ざってしまうんですよね。
だからこそ、要所要所でエージェントと話しながら、自分は何に興味があるのか、これまでの人材紹介経験の何が活かせるのか、今後どのような経験を積みたいのかを、一つずつ整理しながら転職活動を進めました。
最終的に、どのように意思決定をされたのでしょうか?
最終的には、複数社から内定をいただきました。
できるだけ同じタイミングで比較しながら意思決定できるよう、エージェントの方には各社の進捗や面接日程をできるだけ揃えていただくよう、フォローをお願いしていました。
内定をいただいた企業は、必ずしも人材育成・組織開発の会社だけではありませんでした。
そこで改めて、自分がやりたいこと、今の自分にできること、転職先で得られる経験や、その先に想定されるキャリアについて整理しました。
さらに、今回転職せずに現職へ残った場合のキャリアについても考えました。
「今回、どこに転職するか」だけではなく、その選択をした数年後に自分がどうなっているのかまで考えました。
その結果、最初に転職を考えるきっかけとなった気持ちに戻りました。
採用だけではなく、人材育成や組織開発を通じて、企業の人や組織の課題にもっと深く関わってみたい。
その気持ちに一番素直な選択として、人材育成・組織開発コンサルティング会社で新しいキャリアを始めることを決めました。
いま振り返って、当時のご自身をどう見ていますか?
途中は、あれもこれも考えすぎて、整理できなくなった時期もありました。
最初は、企業と人に関わる領域で、より深く課題解決に貢献したいというところから、人材育成や組織開発に興味を持ったはずでした。
ところが転職活動を進めると、自分が成長できる環境とは何か、どんなスキルを身につけたいのか、と考えるようになりました。
さらに、年収はどうするのか、働き方はどうするのか、そもそも事業会社の人事ではなくて良いのか、と、どんどん考えることが増えていきました。
正直、少し疲れましたね(笑)。
特に、現職を辞めることありきで転職活動をしていたわけではありません。
そのため、「本当に人材紹介を辞める必要があるのか」ということも何度も考えました。
そこで現実的に考えたことの一つが、最初に興味を持った仕事と、現在の年収、そして今後のキャリアの関係です。
人材紹介は、個人の業績にもよりますが、賞与やインセンティブを含めると、同じ人材・HR業界の他職種と比較しても、年齢に対して比較的高い年収を得られることがあります。
一方で、人材育成や組織開発、人事コンサルティングの仕事へ未経験で転職する場合、当然ながら経験者と同じ経験やスキルがあるわけではありません。
そこで考えたのが、「数年後に転職しようと思ったらどうなるのか」ということでした。
人材紹介でさらにキャリアを積み、年収も上がった後で、「やっぱり人材育成や組織開発に挑戦したい」と思うかもしれません。
ただ、そのときに単純に「年収を下げれば転職できる」という話ではないかもしれません。
企業側が求める経験や人材像と、自分のキャリアがさらに離れてしまう可能性もあります。
そう考えると、今回感じた気持ちは一時的なものではなく、この先も自分の中に残り続けるのではないかと思いました。
安易に転職を決めたつもりはありません。
ただ、だからこそ、今ここで自分の気持ちに向き合い、新しい仕事に挑戦することが、自分にとって一番納得できる選択だと考えました。
近しい境遇の方へ、何か伝えるとしたら?
「こういう場合は転職した方がいいですよ」とは、なかなか言えないですね。私自身、本当にいろいろ悩みましたから。
現職を辞めるのか、辞めないのか。
今の仕事の何にやりがいを感じているのか。
自分は何をやりたいのか。
これから何を身につけたいのか。
一つを考えると、また別のことを考えてしまう。そんな転職活動でした。
私自身も人材紹介の仕事をしていましたので、最初は自己応募でも、自分で考えながら転職活動を進められるだろうと思っていました。
ただ、今回は「この会社へ転職したい」という明確な一社があったわけではありません。
むしろ、自分が次に何をするのか、その選択肢から考える転職でした。
だからこそ、要所要所でエージェントに壁打ちをしてもらい、選択肢を整理し、選考の準備をしながら進められたことは良かったと思っています。
自分自身がエージェントだったからこそ、転職する側になって改めて、エージェントを利用する意味を感じることもできました。
私は今回、人材紹介の仕事を離れました。
ただ、人材紹介という仕事に意味がないと思ったわけではありません。むしろ今でも、意義のある仕事だと思っています。
ただ、仕事に何を求めるのかは、人によって違います。
人材紹介で培った企業理解や採用、人材に関する経験を活かせる仕事も、人材・HR業界の中にはあります。
今の仕事に違和感があるからといって、これまでのキャリアをすべて変える必要はないのかもしれません。
自分がこれまで経験してきたことの延長線上に、今よりも自分がやりたいことに近い仕事がないか。
一度、広く見てみても良いのではないでしょうか。
編集後記
今回のケースは、人材紹介会社の両面型コンサルタントから、人材育成・組織開発コンサルタントへキャリアチェンジされた事例でした。
印象的だったのは、人材紹介という仕事への不満から転職したわけではなかったことです。
企業の経営課題や組織課題を聞き、採用すべき人材を考え、その採用を支援する。
その仕事に向き合ってきたからこそ、次第に「採用の先」にある人材育成や組織開発にも関心が広がっていきました。
人材紹介からのキャリアを考える際、同業他社への転職や事業会社人事、HR Techなど、様々な選択肢があります。
その一つとして、人材育成・組織開発や組織・人事コンサルティングも、人材紹介で培った経験を別の形で活かせる領域です。
一方で、今回のお話にあったように、未経験領域への転職では、これまでの経験だけでなく、年齢や年収、今後身につけたい専門性まで含めて考えると良いと思います。
「もう少し経験してから」と考えることが、必ずしも将来の選択肢を広げるとは限らないという視点も印象に残りました。
人材紹介の仕事は嫌いではない。
それでも、「自分が本当に関わりたいのは、採用までなのだろうか」と感じることがある。
今回のお話は、人材紹介・HR業界で働きながら、人材育成や組織開発、組織・人事コンサルティングへのキャリアチェンジを考えている方にとって、自分の次のキャリアを考える一つの参考になるのではないでしょうか。
人材紹介会社での経験を活かした転職先や、人材育成・組織開発、組織・人事コンサルティングを含む今後のキャリアの選択肢を整理したい方は、こちらもあわせてご覧ください。
→ 人材紹介会社から転職したい方へ|転職先・キャリアの選び方
コーリング株式会社 佐々木陽一
人材紹介を中心に、人材業界(人材紹介・人材派遣・RPO・求人広告・プロシェアリングなど)や、HR業界(HR Tech・Ed Tech・人事/組織コンサルティング・教育/人材開発など)における転職支援・採用支援に携わる。
人材紹介会社で約19年間、コンサルタント・マネジメント業務に従事した後、事業会社で中途採用・タレントアクイジションを担当。
現在はコーリング株式会社を経営し、人材業界・HR業界のキャリアと採用を支える相談相手として活動している。
▶ ご相談・お問い合わせはこちらから(無料)
▶ 転職を検討されている方
→求職者向けお問い合わせフォーム
※人材ビジネス・HR業界への転職・キャリア形成を支援しています。
▶ 企業の採用ご担当者様
→法人向けお問い合わせフォーム
※人材ビジネス・HR業界の中途採用を、人材紹介を中心に採用支援しています。